@itacchikuのTVはきだしのひきだし

TVドラマ(主に海外)を中心にあれやこれやと。ネタバレありありです。

さよならミーガンハント(ボディ・オブ・プルーフがBONESを越えられなかったワケ)

ボディ・オブ・プルーフがついにS3でキャンセルになりましたね~。
復活の噂もささやかれていたようですが、結局再帰出来ず。
残念無念。

BONESを超えたとの触れ込みで、滑り出しは好調だったのに
蓋を開けてみればS2では視聴率はだだ下がり。
S3でメンバーを大幅チェンジしたにもかかわらず結局シーズン半ばで終了を迎えてしまったボディ・オブ・プルーフ
いまもしつこいくらいに続くBONES(この記事の時点でS11の更新が決まっています)とはどこで差がついたのか。
個人的考察と感想をまとめてみました。
以下ストーリー上の大きなネタバレは無いです。


BONESの主人公テンペランス・ブレナンとボディオブ ~の主人公ミーガンハントの共通項

  • 女性キャラ
  • 検死担当
  • 超優秀な技術力
  • 自己中、傲慢
  • 自分が1番だと思っている
  • なぜか周りに愛される

キャラクター的にはそっくりです。
さらに、ラボで仲間たちと検死をし、事件を解決するというストーリーの基本構成も同じ。
だから、ボディ・オブ・プルーフは「BONESを超えた」をキャッチコピーにして
殴りこみをかけてきたんでしょうね。
今となっては…って感じですが。

客観的にも優秀なBONESのブレナン

ブレナンはアメリカでトップクラスの法医学研究所・ジェファソニアン研究所勤務の法人類学者です。
論文を何本も発表し、研究者としての実績もあります。
過去に所長候補の話もでたところをみると、研究所内でもトップクラスの優秀さでしょう。
自身の経験を元にした小説は毎回ベストセラー。
経済的にもかなりの成功を収めています。
自分自身を「優秀」だと言い切り、「法人類学者としてトップだ」と言い切るブレナンは一見傲慢です。
ですが、ブレナンのその発言はすべて上記のような客観的事実に基づいています。

そして彼女は他人への敬意ももっています。
彼女は自分は専門分野ではトップでもその他の分野に関してはトップではないことを知っています。
だから、ラボのキングを自称する虫や微粒子担当のジャックホッジンズに対しても
IT系アーティストであるアンジェラに対しても、自分の専門外の分野なのもあり
研究内容を否定するような発言も口出しもしません。
カムとは肉担当と骨担当という部分でどちらが研究対象として有意義かという点でぶつかることもありましたが、それでもカムの技術自体には敬意を払っていて、最近ではしっかり専門分野での棲み分けができていますよね。
スイーツの心理学は科学として認めてはいませんが、それはあくまで「心理学」とういう分野に対してでありスイーツ個人を否定することもしません(結果的にそう見えることもありますが)。

ブレナンの一見傲慢な発言の裏には客観的事実に基づく論理があります。
それはそのまま視聴者への説得力になっていると感じます。

主観だけで押し通すボディ・オブ・プルーフのミーガン

一方のミーガンハントはフィラデルフィアの検死官。
街の検視局のいち検死官でしかありません。
元は脳神経外科医でしたが、挫折を経験し検死官となりました。
これ以上彼女の経歴に特記することはありません。
知識と技術はあります。でもそれは、主人公としては当たり前です。
脳神経外科医が、なぜ同じ医学の分野とはいえ畑違いの検死でそんなに優秀なのか。
よくわかりません。

でも彼女は、なぜか自分が一番だと信じて疑いません。
そこに、他人への敬意は感じられません。
上司、部下、同僚、家族…全てに対して横暴です。
自分の専門外の分野においても、彼女は非常に傲慢な態度を取り、堂々と口を出し、個人に対しても否定と攻撃を繰り返します。


そんな時の彼女の理屈はいつも同じです。
「私がそう言ってるんだからそうなのよ!」
完全に主観のみ。説得力のかけらもありません。
まだこれが若い子であれば、若さゆえの無知として多少は温かい目で受け入れられますが、ミーガンは思春期の子どもを持つ、大人の女性です。
説得力のない傲慢はただ扱いにくいだけのワガママおばさんです。

傲慢な彼女が愛されるわけ

二人には真実をストレートに口にしすぎてしまうという共通項もあります。
初対面の相手をムッとさせてしまうのは日常茶飯事ですね。
しかし、ここにも二人の大きな差がでます。

  • オブラートの包み方を知らないブレナン
  • オブラートに包む気のないミーガン

ブレナンはひたすら純粋です。駆け引きを知りません。
事実は事実であり揺らがないものなので、普通はあえて言わないようなことも
そのまま事実として口にします。
ですが、自分の物言いが例え事実でも人間関係において表現としてよくなかったと指摘されると「そういうものらしい」と理解して素直に反省の態度を見せますね。
聡明な彼女は、自分はこの手の対人スキルを理解する能力に欠けていることを理解しています。

ミーガンは他人と駆け引きをします。
ブレナンのような純粋さは持ち合わせていません(笑)
ですが、性根がワガママクイーンなので「私に従いなさい」が基本パターンです。駆け引きを知っている上で相手に配慮をしようとしない態度には傲慢さを感じますね。
ミーガンも反省して謝ることはあります。ですがそれは「自分が謝りたいと思ったから」という理屈です。
想像ですが、きっと相手が謝罪を受け入れないと逆ギレするタイプじゃないかなぁ…(笑)

ブレナンのように失礼な発言をしてしまうけど、悪意はなく指摘すれば受け入れてくれる素直さを持つ相手とは友人や恋人として付き合えます。彼女の欠点として受け入れる事もできるでしょう。万人に愛されなくても、理解してくれる仲間は得られそうです。


ミーガンのように自分の感情だけを基準に攻撃したり謝ったりしてくるタイプは、私だったらお付き合いを遠慮します。はじめは欠点として受け入れようとしても、周りは結局振り回されて疲れ果てて離れていくしかありません。
それなのにミーガンはなぜか愛され許される。ストーリー上にその理由がないんですよね。


無知は許容できるけど故意は許容しがたいという心理は視聴者にも働きます。
そんなわけで、番組としての視聴者からの愛され度にも差がついてしまったと思います。

さらに付け加えれば、この主人公の性格の差が全体の構成としても

  • キャリアにも愛される理由にも納得できる背景を用意してあるBONES
  • 理由なく「主人公だから」でゴリ押ししようとしたボディ・オブ・プルーフ

という大きな差になってしまったんじゃないでしょうか。
説得力のないストーリーに対して、視聴者は厳しいものです。

とはいえ、ボディ・オブ・プルーフもそれなりに面白いドラマではありました。
さよならミーガンハント。お疲れ様。